「僕……嫌われてるのかな」
かなり気落ちしたような口調で、瞬が、まるで独り言のようにぼやく。

紫龍は僅かに、星矢は大仰に、首を左右に振った。
「そんなことはない。氷河は──正しく お子様なだけだ」
「氷河の奴、図体ばっかりデカくなって帰ってきたよなー。中身にまるで成長の跡なし。よっぽど甘い師匠についてたんだな」
「そう言う星矢はチビのままなわけだが」
「俺以外の奴等がデカくなりすぎただけだ! だいいち、見てくれなんか、デカけりゃいいってもんじゃないぞ!」
「氷河がいい例というわけだ」
「そーだよ! わかってんじゃん」

今はこうして笑っていられるが、星矢も紫龍も──もちろん、彼等にお子様だと言われている氷河も──この6年の間にそれぞれに辛い経験を積んできたのだということはわかっていた。
それでも、6年前と変わらない──変わったところを見せない──仲間たち。
彼等と共にいる空間に、瞬は不思議な安堵感を覚えていた。
ここが自分の故郷なのだと、心から思う。
そして、もう一つ、あとただ一つだけ足りないものが帰ってきてくれば、瞬の故郷の姿は完璧なものになるのだ。

紫龍や星矢たちのやりとりに笑ってみせているその時にも、瞬の胸には、鋭い針に刺されているような痛みがあった。
自分の故郷の姿が完璧になる日が来るまでは、決して消えないであろうその痛み。
この痛みの消える日は本当にやってくるのだろうかと思っただけで、瞬の視界は薄い涙の膜で少しずつぼやけていった。






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