沙織が、彼女の聖闘士たちに二度目の召集命令を出したのは、それから3日後のことだった。
常識的に考えれば、自らの人生の方向を決めるために費やす時間が3日間というのは、短すぎるほどに短いものだったろう。
が、思い切りの良さで売っているアテナの聖闘士たちに無駄に長い時間を与えることは、それこそ無駄の極みだということを、彼女はよく知っていたのである。

実際、彼女の期待通りに、彼女の聖闘士たちは自らの進む道を見つけ、それぞれの決断を済ませていた。

「俺、どっかのクラブの入団テスト受けてみる。でも、沙織さんの口利きはいらないから。コネなしで挑戦してみるよ。うまくいって、契約結ぶ段になったら、色々知恵を借りるかもしれないけど」
というのが、天馬座の聖闘士の決意。

「バイオメディエーション研究をしているグラードのラボにお世話になりたい。俺は、地球の自然の浄化と復活の研究に勤しむことにする」
というのが、龍座の聖闘士の決定。

そして、
「ジゴロは聞こえが悪いから、山師になることにした。シベリアに引っ込んで、ダイヤかタングステンの鉱脈でも探すことにする。グラードの財力を倍にするか、多大なる損失を出して税金対策に貢献してやるさ」
というのが、半ば自暴自棄とも言える白鳥座の聖闘士の決断だった。

彼等の決めた彼等の人生と将来に頷きながら、沙織が、残る一人に向き直る。
「瞬は?」
「あ、僕は、福祉関係の勉強をしながら──」
「しながら?」

反問された瞬は、一度大きく息を吸い、それを吐き、明るく笑って、
「恋に生きることにしました!」
と、言った。






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