幸せだった分、別れの日は辛い。
その日、瞬は、どうしても笑えなかった。

「一人になっても泣くんじゃないぞ。決して挫けるんじゃないぞ」
そう言って、瞬を慰め励ます兄の前で、だが、瞬は、泣くことしかできなかった。

この別れは、これまでの時とは違うのだ。
今度はいつ会えるのかわからない。
もしかしたら二度と会うことは叶わないかもしれない。
そんな時に「泣くな」とは、無理な話である。

そして、その日も、氷河は瞬に「泣くな」とは言わなかった。
「今度会う時には、ちゃんと笑ってみせろよ」
兄との別れに涙している瞬に、氷河はそう言い、瞬は泣きながら、氷河に頷いたのである。






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