氷河との再会の日には、約束通りにちゃんと笑えた。
氷河も微笑み返してくれた。
その時にはまだ瞬の兄は帰ってきていなかったが、きっと兄の前でも笑える日がくると信じて、瞬は笑った。

それからも、辛いことがなかったとは言えない。
瞬が泣かずにいられないようなことは、幾度も幾度も起こった。
しかし、そのあとには必ず笑って、瞬はそれらのことを乗り越えた。

泣いて、笑って、泣いて、笑って。
まるで古い演歌のフレーズのようだが、確かに人生とはそういうものなのかもしれないと思えるほど、辛いことは繰り返し起こり、そして、喜びもまた繰り返された。

だが、やがて──。
涙のあとには必ず微笑んでいられた瞬に、どうしても笑うことができなくなる日が訪れたのである。
他でもない、瞬に『泣いたあとに笑えれば、それが本当に強いということだ』と言ってくれた氷河が、それまでその言葉でずっと瞬を支えてくれていた氷河が、その原因だった。






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