瞬はいつまでも泣きやまない。
無視することで、これまでのように瞬を──同時に自分自身をも──誤魔化し続けるには無理がある。
氷河は覚悟を決めて、瞬を避けていた理由を、彼に告げるしかなかった。
「俺は──おまえのために、おまえを見ないようにしていたんだ」

「どうして僕を見ないことが、僕のためなの。どうして──」
いっそ嫌いになったとはっきり言われる方がずっとましだと、瞬は思ったのである。
そうなのであれば、理由を聞いて自分の欠点を直すこともできるではないか。

「だから……!」
氷河は、瞬の鈍さに苛立ちを覚えずにいられなかった。
それが自分勝手な憤りだということはわかっていたが、それでも、である。

やむを得ず、腹をくくる。
そして、氷河は言った。
「おまえは綺麗になりすぎた。強くなりすぎた。可愛くなりすぎた。俺は──」

わかってもらえるのだろうかという懸念を振り払うために、氷河は一度言葉を途切らせた。
大きく息を吸い、その息と共に、続く言葉を吐き出す。
「俺は、おまえを押し倒す気満々でいるんだよ!」
「え?」

瞬は──氷河の懸念通りに、氷河の苦悶を理解してはくれなかった。
綺麗になって強くなっても、オトナにだけはなってくれていない瞬。

これでわかってもらえないのなら、他に氷河に打つ手はなかった。






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