「押し倒す気満々って、どういうことなんだろう……? 氷河は僕と闘って、僕を倒したいって思ってるの?」

氷河は、瞬を評して、『強くなった』と言っていた。
これは、もしかするとその弊害なのだろうか。
氷河は、強くなった昔馴染みにライバル心を抱くようになってしまったのだろうか──?

「うー……」
瞬に相談を持ちかけられた紫龍は、頭痛を覚えていた。
瞬が本気でその言葉の意味がわからないと言っているのであれば、これはもうどうしようもない。
瞬に、その手の日本語を一から教えてやるほどの酔狂も意欲も、紫龍は持ち合わせていなかった。
そして、もちろん、他人の色恋沙汰に首を突っ込むつもりは、紫龍には毛頭なかった。

「氷河にそう言われたことは、一輝には言わないでおくことだな」
紫龍にできることは、瞬にそう助言することくらいのものだったのである。






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