──電話のコール音が遠くで聞こえる。 身体を包む陽光の熱さが、時刻がもう朝ではないことを、瞬に教えてくれた。 それが、室内の固定電話のコール音なのか、氷河が持たされている携帯電話の発する音なのかは、瞬にはわからなかった。 氷河は、瞬の中への何度目かの進入をしようとしていた。 「電話が……」 鳴っていると言おうとした瞬の唇が、氷河の唇に塞がれる。 「最初の時ほど痛くなくなっただろう?」 サイドテーブルの上にあるはずの受話器に伸ばそうとした瞬の手を、シーツの上に押さえつけて、氷河が尋ねてくる。 そして、彼は、電話の呼び出し音を綺麗に無視して、瞬に覆いかぶさり、その中に入ってきた。 「うん……。ん……っ……あ……っ」 夕べは泣きわめくこともしたような気がするが、瞬の記憶は既に曖昧になっていた。 瞬の唇から漏れる声はもう、悲鳴にはならない。 それは、喘ぎとしか呼べないものになっていた。 確かに痛みもあるが、今はむしろ痺れの感覚の方が強く、瞬は氷河のそれが自分の体内にあることを心地良く感じていた。 「ああ……」 電話に出ることを諦めて、瞬は、その感覚に夢中になることにした。 無意識の内に腰が浮いていく。 どうすればもっと心地良くなれるのかを、一晩かけて、瞬は体得してしまっていた。 そうしようと意識しなくても、瞬の身体は勝手に、その動きを始めようとする。 だが、瞬がそうするより先に、氷河が大きく瞬を揺さぶり始めていた。 「あああ……っ!」 昨夜の最初の時から、確かに痛みは続いている。 だが、昨夜幾度か経験したあの不可思議な感覚をまた味わえるという期待を意識した途端、それは、ただの痛みではなくなった。 瞬は、細い両の腕を伸ばして、氷河の肩にしがみついた。 そんなことにならないことはわかっているのだが、氷河に振り払われてしまわないために、その指先に力を込める。 やがて、瞬の身体が、瞬に断りもなく、少しずつのけぞり始め、瞬の意識は再び途切れそうになっていた──その時。 |