俺に会いたくないと言い張り、俺の顔を見ると泣き出してしまう瞬から、俺の代わりに話を聞き出してくれたのは星矢だった。
俺は、法務大臣の印鑑が押印された死刑執行命令書を処刑場で待つ死刑囚のような気分で、星矢が戻ってくるのを、ラウンジで待つことになった。

長髪露出狂変態男が、俺の掛けているソファからいちばん離れた場所にある椅子で、雑誌に目を通す振りをしながら、俺の様子を窺っている。
奴としては、俺を奈落の底に突き落としてやりたいのは山々だが、瞬のこともあるので、事情がわかるまでは、それを控えている──というところだったろう。

結果、その場に存在するのは重苦しい沈黙だけということになり、その沈黙を破ってくれる星矢がラウンジに戻ってきた時には、俺は、やっとこの生殺しの状態から解放されるんだと、一種の安堵感さえ覚えたのだった。
星矢が運んできたものが、死刑執行の命令書だとわかっていても、である。

「瞬がおまえを避けていた原因がわかった」
ラウンジに戻ってきた星矢の顔は、らしくもなく硬く強張っていた。
「いいか、氷河。聞いて驚け」
「覚悟はできている」

そう。
俺の覚悟はできていた。
星矢に告げられる罪状が何であっても、どんなことを言われても、俺にできることは結局、自分の非を認め、瞬の前に土下座して謝罪し、至らぬところを直すべく努めると、瞬に約束することだけなんだから。

「瞬はな」
「瞬は……?」
俺は、全身を緊張させ、ごくりと息を飲んだ。
途端に星矢が眉をしかめて、呆れかえったような顔になる。
そして、星矢は言った。

「瞬は、おまえとのナニが気持ち良すぎて、怖くなったんだと」

俺の頭の中が真っ白になった。






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