朝になると彼はまた白い鳥の姿に戻ってしまうのだ──と思うと、シュンは、自分の隣りに仰向けに横になっている公爵が、荒ぶっていた息を整えようとしていることさえ、悲しく感じられた。
それが、公爵がシュンとは別の生き物に変わり、シュンの側を離れるための行為のように思えてならなかったのだ。

「僕は、昼の間は公爵様と一緒にいられないんですか」
「気の利いた言葉もかけてやれない鳥といたって、つまらないだろう」
「そんなことありません! 僕は公爵様といられるのなら、その方がずっと……! あ、いえ、あの……」

たった一度の交わりで篭絡されたと思われるのは恥ずかしく、シュンはその先を言葉にしなかった。
公爵が、おまえには驚かされてばかりだと、嬉しそうに呟き、シュンの肩を抱き寄せる。
「ヒョウガだ」
「はい?」
「俺の名」
「ヒョウガ様」
「様はいらない」
「でも……」

シュンの懸念を遮ったのは、今度は公爵の唇ではなかった。
彼の指が、先ほどの交接の名残りでまだ疼いているシュンのその場所に、忍び込んでくる。
「あっ……」
「昼の間は東の塔にいる。意識はちゃんと人間だから、暴れたり騒いだりはしないが──俺だけじゃなく、他にもあの魔女の呪いを受けた者がいるから、見ても驚かないでくれ」

「公爵様の他にも? ああ……っ!」
ヒョウガの指のいたずらに耐え切れず、シュンは声をあげて身悶えた。

「本当は、昼も夜もこうしていたいんだが」
悔しそうに呟いて、ヒョウガは、再び自分の意思を手放しかけているシュンの中に、彼の無念を代弁するものを突き刺した。






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