僕の半分。僕のかけら。
僕の不安定と不完全を埋めてくれる もう一人の僕はいったいどこにいるんだろう?
仲間たちに旅立ちの言葉を告げて彼等と別れ、僕は僕を探す旅に出た。

僕が最初に出会ったのは、ブラックアンドロメダだった。
僕が僕の旅の目的を彼に告げると、彼は、自分こそが僕の半身だと言ったんだ。
ブラックアンドロメダは、僕の闇の部分が自分だと 僕に告げた。
そして、僕を誘ってきた。

「俺と一緒に、他人を無視して生きていこうぜ。周りの奴等の目を気にして本当にしたいことを我慢して いい子の振りして生きてるのは窮屈だろ? 人を傷付けても痛みを感じることのない心を、俺はおまえに与えることができる。人に傷付けられても痛みを感じない心も、俺はおまえに与えることができる」

人を傷付けても人に傷付けられても痛みを感じない心。
そんなものが手に入ったら、生きていることがどんなに楽になるだろうって、僕は思った。
でも、ブラックアンドロメダは、そんな強い心をどうやって手に入れたんだろう?
そして、どうやってそれを僕に与えてくれるっていうんだろう?

僕は、彼に訊いてみた。
彼は得意げに答えた。
「誰も愛さず、誰も信じなきゃいいんだよ。愛してない相手なら、傷付けたって痛みは感じないだろ。紙クズを丸めて捨てるようなもんさ。誰かを信じるから、裏切られた時に傷付くんだろ。誰も信じずにいれば、傷付かずに済む。誰かを信じたって どうせ裏切られるだけなんだから、最初から信じずにいればいいんだよ」

誰も信じずに二人で一緒に生きよう――と、ブラックアンドロメダは僕に言った。
それは、なんて矛盾した言葉だろう。
そして、なんて寂しい言葉なんだろう。
誰かを傷付けることで苦しまないために、誰も愛さないなんて。
自分が傷付かないために、誰も信じないなんて。
そしたら、人は誰もが一人ぽっちになってしまう。
誰も信じない人間が孤独にならないはずがない。
ブラックアンドロメダは、彼自身も、それから、彼が彼の半身だという僕をだって信じてないってことだよね。
僕はそんなのは嫌だった。

「人を信じずにいたら、傷付くことも傷付けられることもないかもしれないけど、僕がそんな僕になっちゃったら、友だちもできないし、仲間に嫌われるし……」
そんな生き方、僕は寂しくて耐えられそうにないよ。

「友だちだの仲間だのがどうでもいいから、おまえは一人で旅に出たんだろ!」
ブラックアンドロメダはそう言って僕を怒鳴りつけたけど、僕は、それは違うと言って彼の許から立ち去った。






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