ブラックアンドロメダの次に僕が出会ったのは、アフロディーテという綺麗な人だった。
氷河とどっちが綺麗だろうって、僕が悩むくらい。
アフロディーテの“綺麗”と氷河の“綺麗”は全然種類が違う“綺麗”だったけど。
アフロディーテは、私こそが君の半身だと僕に言った。

「ブラックアンドロメダのように、誰も信じず、誰も愛さず、周囲の人間の目を気にせずに自分のしたいことだけをして生きるのは結構なことだが、それを露骨に言動に表すのは愚かな人間のすることだ。人は一人では生きていけないのだから、仲間は必要だろう」
その綺麗な人が綺麗な唇を歪ませて、僕に言う。

「自らの不信を隠さずに堂々と行なえば、自分も他人から信じてもらえない。だから、外見は美しく飾っておかなければ。自分は他人を愛し信じていなくても、他人には自分を愛し信じさせる。それが利口な生き方というものだ。そうすれば、人を傷付けることで痛みを感じることはなく、人に傷付けられても苦しまずに済む。君は、君の大好きなオトモダチやナカマを失わずに済んで、孤独にはならない」

綺麗な人のその言葉に、僕は――何て言ったらいいんだろう?――僕は、ブラックアンドロメダよりも深い孤独を感じたんだ。
この人は、ほんとは一人で生きていける人なんじゃないかと、人は一人で生きていけるものだと考えているんじゃないかと 思った。
この人はただ、自分が孤独な人間だと人に思われることをみじめなことだと思っているだけなんじゃないか……って。

だから、僕は首を横に振った。
「あなたの言うようにしたら、自分が傷付くことだけはないかもしれないけど、そんな嘘で繋がった上辺だけの友だちや仲間と一緒にいることは、一人ぽっちでいることよりつらいんじゃないかな」

それに――信じるとか信じないとか、そんなことは『決めて』からすることじゃないよ。
僕は僕の仲間たちを信じてるけど、それは僕が星矢たちを信じると『決めた』から信じてるんじゃなく、信じずにいられないから信じてるだけなんだ。
星矢たちとこれまで一緒に闘ってきたことや、星矢たちのなんてことのない普段の言動が、僕に仲間を信じさせる。
それだけのことなんだ。

僕はどうしてこの人を綺麗な人だと思ったんだろう?
ううん、この人は確かに綺麗な姿形をしてるけど――この人の考えを聞いてしまった今の僕の目には、この人が以前のように綺麗には映らない。
氷河の“綺麗”の方が、僕はずっとずっと好きだ。
星矢たちの方がずっと綺麗だよ。

だから――
「さようなら。僕の半分はあなたじゃない」
僕はそう言って、アフロディーテの前から立ち去った。






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