「間違っていたら正せばいい。私はそうした」

僕が僕を探す旅に出て4番目に出会ったのは、ソレントという人だった。
僕は、僕を探す旅で初めて同感できる相手、共感できる人に会った。
でも彼は、彼が僕の半身だとは言わなかった。
「あなたは僕のかけら? あなたは僕の半分ですか?」
僕はちょっと不安な気持ちで彼に尋ねた。

「君のかけら? 君の半分? それは何だ? 私は私ひとりで完全な私だ。半分などない。そんなものは必要でもない」
ソレントはとても冷静な声音で――冷たいとも感じられるみたいな調子で、僕にそう言った。

「君だって、私を君の半身だとは思っていないのだろう? 君が一緒にいたい人は他にいるのではないのか?」
でも、彼は決して冷たい人ではなかったみたい。
彼は、まるで、一人で旅をしている僕の寂しい心を見透かしてるみたいに、忠告するみたいに、そう言ってくれたんだ。

彼の言葉で、僕は僕の大切な仲間たちのことを思い出した。
僕は、旅に出たばかりだったのに――そんなに長い間ひとりでいたわけじゃなかったのに――とっても懐かしい気持ちになった。
でも僕は、僕が僕の半分に出会っていないせいで自分が半人前みたいな気がして、僕が不完全な僕だってことがみんなの負担になってるような気がして、だからこの旅に出たんだよ。
僕が完全な僕になったら、僕の中にある闘いたくない気持ちや、そのせいで生まれる弱さのせいで、みんなを気遣わせることもなくなるだろうと思ったから。
でも――でも、確かに、僕が一緒にいたいのは僕の仲間たちだった。

いつも一生懸命で明るくて屈託のない星矢の笑顔。
物知り顔で分別顔で、そのくせ肝心な時にはいつも 理屈より信義を選ぶ紫龍。
それから、冷たいんだか熱いんだか、いつも一緒にいても全然わかんない氷河。
みんな僕とは違うけど、僕は彼等を信じずにはいられない。

そう、僕の仲間たちはみんな僕とは違う。
似たところは全然ない。
価値観も違うし、大切なものもそれぞれに持っている。
彼等が僕の半分のはずはない。
それはわかってるんだ。

氷河なんか特に、僕とは正反対だ。
僕はやたらと人の気持ちを気にしちゃう方だけど、氷河は無愛想で素っ気ない。
僕はいつもなるべく穏やかな気持ちでいたいと思ってるけど、氷河は熱い方向にも冷たい方向にも激情的。
僕と氷河はまるで似てない。
同じもののために闘っていることの他には。
僕はいつもみんなを見てるのに、氷河は自分の大切な人しか見ていないんだ――。

――氷河は、氷河の大切な人しか見ていない。
僕は、僕が氷河の視界の内にいないような気がして、それがずっと寂しかった。
側にいても寂しかったんだ。
まして、こんなふうに離れていたら――。

一人で、一人ぽっちで自分を探す旅はとても寂しい。
こんなに寂しいのに――兄さんはどうしていつも仲間と離れていられるんだろう?
兄さんは一人でいることが寂しくないのかな? つらくないのかな?
僕は寂しくてつらい。
それは僕がまだ半分だけの僕で、未熟で不完全だからなのかな?

でも、それでも。
僕は、僕が半分のままでもいいから、みんなのところに帰ろうかなって……そんなことを考え始めていた。






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