僕が半分のままでいても寂しくない場所。 僕が不完全な僕でいても、そんな僕を受け入れてくれる仲間たちのいる場所。 僕がいたい場所はやっぱり氷河たちのいる場所だ――僕がそう考えた時だった。 ハーデスが僕の前に現れたのは。 「余はそなたを支配する者だ」 と、ハーデスは僕に言った。 彼に支配されて彼の一部になってしまえば、僕の心と身体が彼と同化してしまえば、僕はもう僕の半分を求める旅を続ける必要はない――って。 それから、彼は、自分は完全だと、自分は無敵だと、自分は絶対の正義だと、僕に宣言した。 神だから、そうなんだって。 人間には到底太刀打ちできない強い力を持った神だからそうなのかもしれないけど、ハーデスは傲慢とも思えるくらいの自信に満ちていた。 僕は、本能的な恐れを、彼に覚えた。 彼と同じものになるくらいなら、僕は迷いを消し去れない弱くて不完全な存在でいた方がずっといいとさえ、僕は思った。 「さあ、余の許に来い。余がそなたを支配してやろう。そうなれば、そなたはもう自分の弱さに悩むことも傷付くこともなくなる」 漆黒の神が、そう言って僕を両腕で包み込もうとする。 僕は恐怖に駆られて、その場から駆け出した。 差し出されるハーデスの手から逃れるために、懸命に走った。 |