その国では、罪人を裁く時、支配者の裁定や法律に 罪を犯して裁かれる者は、観客で満員の闘技場に引き出される。 観客席と闘技場の隔壁の正面には扉が二つ。 闘技場に連れ出された罪人は、二つの扉のどちらかを開けなければならない。 一つの扉の向こうには飢えて狂暴になった虎、もう一方の扉の向こうには一人の美女が待っている。 審判は、罪人の選択という運命に委ねられる。 虎の扉を選べば、彼は飢えた虎の爪に引き裂かれ、その牙で噛み殺される。 美女のいる扉を選べば、彼はその美女を得て、無実の裁定を受けることになる。 ただし、彼は必ず彼女と結婚しなければならない。 ある時、身分の低い若者が、この国の王女と恋に落ちた。 二人の恋はやがて王女の父である国王の知るところとなり、若者は激怒した国王に捕らえられ、裁きの場に引き出された。 満員の観客は裁きの時を待っている。 父王と共にその場に臨席する王女は、どちらの扉が残忍な虎のいる部屋に続く扉なのかを知っていた。 もう一方の扉の向こうにいる女が、自分の恋人である若者に恋している美女だということも知っていた。 若者が虎のいる扉を選べば、彼は飢えた虎に噛み殺されてしまうだろう。 しかし、若者が美女のいる扉を選べば、王女は彼が自分以外の女と結ばれる様を見なければならない。 命永らえた若者は、彼を恋い慕う美女と結婚し、決して結ばれることのない身分違いの恋を忘れてしまうかもしれない。 その可能性を考えると、王女は嫉妬で気が狂いそうになる。 闘技場に引き出された若者が、臨席している王女に視線を向ける。 王女は、彼女が恋する若者に、彼にだけわかる仕草で、彼が選ぶべき扉を指し示した――。 |
■ Frank Richard Stockton 『 The Lady Or The Tiger ?』 より
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