あとに残された氷河の3人の婚約者たちは、まるで熱病の発作でも起こしたような氷河の言動に、ひたすら唖然とし、呆然としていることしかできなかったのである。
2、3分の後、なんとか気を取り直したエリスが、持ち前の前向きさを発揮する。
「まあ、氷河が同性愛嗜好者だってことは、いい言い逃れにはなるでしょうけど」
「親たちには、氷河のせいでひどい男性不信に陥ったとでも言えばいいかも」

「氷河、本気みたいね……」
フレアの呟きに、ナターシャが苦笑めいた笑みを口許に刻む。
「いいことなんじゃないの。無関心無感動無責任男が、走り出さずにいられないほどの相手に巡り会えたってことなんだから」
「そうね。これはきっといいことね」

こんなことだろうとは思っていたのだ。
無関心無感動無責任を身上にしている氷河が、瞬を救うために、彼女たちが根城にしていたあの部屋に飛び込んできた時から。

恋ではなかったが、5年間大切な仲間だった。
その幸福を心から願える程度には、彼女たちは氷河を好きだった。






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