瞬が氷河の真意に気付いたのは、ポセイドンとの闘いのあとのことだった。

「また証明し損なった。俺はいつも――」
傷付いた片目を左の手で押さえながら、瞬の前で氷河は呻いた。
なぜ彼がそんなにもつらそうに、そんなことを言うのかが、瞬にはわからなかったのである。

今度の闘いで、氷河は瞬に対して、何も『し損なって』いない。
そもそもその機会がなかったのだから、それを『し損なった』と表現するのは間違っている。
海王ポセイドンとの闘いの中で氷河の身に起こったことと言えば、彼が兄弟子を失ったこと――カミュの時と同じように、彼がその手で彼の昔馴染みの海闘士をひとり倒したことだけだった。

「つ……」
片目を押さえて、瞬を見ようともせずに、氷河が低い呻吟を洩らす。
その時瞬は初めて、氷河が本当に望んでいることが何なのかがわかったような気がしたのである。

「氷河が証明したいのは、本当は、僕を好きなことなんかじゃないんだね」
それは、瞬には、ひどく悲しく感じられる事実だった。






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