ある日、瞬のその順調な成長を妨げ乱す波が生まれ、ハーデスは意識を強く覚醒させた。 瞬の前に金髪の男がいる。 瞬はひどく混乱しているようだった。 自分を律することに長けていた瞬の心が、驚くほど千々に乱れている。 突然生じた嵐のように、その男は瞬の心をかき乱し、彼によって乱された瞬の心はもはや元の整然とした位置に心の部品を戻すことはできなくなるのではないかとまで、ハーデスを懸念させた。 紆余曲折の末、瞬はその男を受け入れることを決めたらしい。 その決意を為すと、瞬はゆっくりと自らの心の再構築にとりかかった。 乱れきっていた瞬の心の部品が収まるべきところに収まり――それが、嵐の到来の前と同じ場所だったのかどうかはハーデスにもわからなかったが――瞬の心は以前より温かみを増し、豊かになった。 人間が清らかなものであり続けるには、“運”もあるのかもしれない。 人の心を汚す大きな要因は、裏切り、あるいは裏切りを疑う心、裏切られたと思い込むこと。そういった事柄である。 瞬が選んだ相手は、もともとが志を同じくする仲間であった上に、ほとんど盲目的に瞬だけを見ていて、瞬は恋につきものの疑いの思いを生じることすらできないでいるようだった。 疑いや不安のない恋。 人にそんなものができるのかと、それは本当に恋なのかと、ハーデスは疑ったのである。 だが、二人はそれをしてのけた。 そして、まもなく、恋の当然の帰結として、二人は身体を交えることをした。 興味を抑え難く――ハーデスは瞬に感覚を同調させてみたのである。 |