シュンには部屋が用意されていた。
まさか本当に国王付きの秘書に抜擢されたわけでもないのだろうが――もしそうだったとしても、シュンにはそれは新参の勤め人には贅の過ぎる部屋に思われたのである。
シュンをそこに案内してくれたのは、国王の執務室でヒョウガの側にいた黒髪の侍従だったが、彼が『あなたのために用意された部屋』と説明したそこは、続き部屋になった居間と寝室の他に浴室や衣裳部屋――しかも新調の服が幾着も準備されている――まで備わっていたのだ。

「あの……僕はいったい……。ここ、贅沢すぎませんか? これは何かの間違いでは――」
戸惑っているシュンをしばらく無言で、まるで観察するように見詰めてから、彼は、
「あなたは王の要請を受けられたのでしょう」
と、抑揚のない声で告げた。
「浴室はいつでも使えるようになっています。かなり緊張されていたようですが、しばらくこちらでお体をお休めください。本日の執務を終えられましたら、陛下から直接ご説明がありましょう。それまでには着替えを済ませていてください。わからないことは小間使いにでも」

「は……はい……」
有無を言わせぬ彼の態度に、シュンはそれ以上 彼に何を問うこともできなかった。






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