すっかり衣服が取り除かれたシュンの身体のあちこちに、ヒョウガの手が興味深げに伸ばされてくる。
ヒョウガの手と唇が、シュンの身体のあらゆるところに熱を運んでくる。
緊張しているシュンの身体は、どこに触れられても、ヒョウガのもたらす感触を熱い刺激として認識した。
「ああ……っ!」
耐え切れずに声をあげると、シュンの胸の上にあったヒョウガの唇は軽い笑い声を洩らした。
「おまえは俺と違って、どこに触れられても歓ぶんだな」

ヒョウガにからかうようにそう言われた時にはもう、シュンの身体は異常なほどに熱を帯びてしまっていた。
ヒョウガの指がシュンの内腿の間に割り込んでくる。
「あ……んっ!」
シュンの唇から洩れる声は、シュン自身もこれまで聞いたことのない、泣き声のような悲鳴のような、そしてなぜか笑っているようにも聞こえる、不思議に間歇的な声だった。
その声を喜んでいるようだったヒョウガが、ふいに僅かに心配そうな顔になる。

「だが、ここに入れたら痛いだろうか?」
シュンの身体の表面をすっかり触れ尽くしたヒョウガの指が、シュンの内部に忍び込んでくる。
「やっ……やだっ!」
あまりのことにシュンは、初めてはっきりとヒョウガを拒む言葉を吐き出してしまったのである。

が、ヒョウガはそれを拒絶の言葉とは受け取らなかったようだった。
やはり心配顔のまま、シュンの中でそれを、用心深く、まるで割るわけにはいかない陶器の感触を確かめるように、角度を変え幾度も執拗にうごめかす。
「やっ……あっ……あ……あ……っ」
そのたびに、シュンの喉からは あの不思議な声が、止めようもなく押し出された。
身体の内側を何かが這っているような その感覚は、ひどく不快で、ひどく異様だった。
頬と ヒョウガに触れられている部分とに、二極化して血が集中する。
不快と思っていたその感触を、自分の身体が実は歓んでいることにシュンが気付いたのは、自分の身体が勝手に腰を浮かして、ヒョウガの指に我が身を押しつけていることを自覚した時だった。

「大丈夫そうだ、な」
ヒョウガはとっくに、シュンの身体のしていることに気付いていたらしい。
彼は、シュンの耳許に呟いた。
何が大丈夫なのかと、シュンはヒョウガに問い返したかったのである。
彼に弄ばれている者は苦しくて恥ずかしくて気が狂いそうだというのに、いったい何が大丈夫なのかと。
だが、ヒョウガの指のいたずらに喘ぎ、頬を染め、腰をうごめかすことさえしているシュンの様を見たら、ヒョウガでなくてもそう判断することは当然で、また自然ですらあったろう。

ヒョウガがシュンの脚を開き、膝を立てさせる。
彼が自分に何をするつもりなのか、もうわかりたくもなくて、ただ無性に泣きたくなって、シュンは固く目を閉じた。
その瞬間にヒョウガがシュンの中に入り込んでくる。
「あああああ……っ!」

シュンは逃げ出したかった。
今すぐここから、この王宮から逃げ出したかった。
自分の身体の中に打ち込まれてくるものと、それに絡みついていく自分の身体から逃げ出したかった。
だが、そんなことをしたら子供たちはどうなるのか――。
シュンの意思に反してヒョウガを歓ばせることをする自身の身体を、喜べばいいのか蔑めばいいのか――シュンにはそんなことすらわからなかった。

やがてシュンの膝を抱えあげるようにしたヒョウガの律動が始まる。
「あっ……や……そんな……ああっ!」
苦しくて呼吸ができない。
声をあげ、喘ぐことをしないと、息が詰まってしまいそうだった。
心臓が信じられないほど速く大きく波打って、シュンの身体に血を送り出している。
おそらくは、ヒョウガとつながっている部分に駆けつけ、その脈動で彼を歓ばせ、自身もまたその楽しみを楽しむために。

快と不快、痛みと歓喜の区別がつかなくなった頃、シュンは、自分の身体の内から したたり落ちたものが内腿を伝う感触に気付いた。
それが自分の血でも汗でもなく、ヒョウガが吐き出したものだということに気付き、シュンはやっと、気が狂ってしまいそうな この苦行が終わったことを知ったのである。






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