ヒョウガは慈しんでいるつもりの行為を、シュンはなぶられていると感じる。
シュンは明け方近くまで、その矛盾に耐えなければならなかった。
自分自身の心と身体の矛盾にも。

シュンの身体は、朝の光の中で確かに疲れ果ててはいたが、これまでに経験したことがないほどの充足感を感じてもいた。
力によって捻じ伏せられた心は、傷付き血を流しているというのに。

「俺は9時から午前の執務に就かなければならないが、おまえはゆっくりしていろ。好きなことをして過ごしていればいい。……おまえは勉強好きなんだったな。勉強したいのなら、俺の私費で教師をつけてやる。この城の書庫には、かなりの蔵書があるぞ。昼食はおまえととる」
昨夜ほとんど眠っていないことが信じられないほどきびきびした動作で、ヒョウガは誰の手も借りずに身仕舞いを整えた。

「誰かいるか」
身支度を終えたヒョウガが扉の向こうに向かって声をかけると、衛兵ではなく、昨日の黒髪の侍従が室内に入ってきた。
シュンは慌てて掛け布を引き上げ、身体を隠した。
ヒョウガはそんなシュンの所作も、侍従に自分の雇った愛妾の裸体を見られることも気にした様子を見せなかった。

「シュンに書庫への出入りを許可する。そうしたいと言ったら、望むように手配してくれ。それから――」
ヒョウガが少し小声になる。
「今日だけ、シュンの世話はおまえがしてくれ。シュンは色々と――この王宮について知らないことが多いだろうから」
「はい」

表情を変えずに頷く侍従を見て、ヒョウガは安堵したように寝室を出ていった。
その場に、シュンとシュンの世話を命じられた者だけを残して。






【next】