数日後、国王の公認愛妾への手当てとして、とてつもない金額がシュンに提示され、シュンはその額を聞いてあっけにとられた。
それは、初めて会った日にヒョウガがシュンに与えようとした指輪を10個は買えるほどの額だったのである。

「俺は国のために働いていて、おまえはその俺のために働いてくれている。つまり、おまえは国のために勤めているわけで、これは当然の報酬だ。不足なら、俺個人の財産からも出すぞ?」
「…………」
そう言うわりに、ヒョウガ自身の衣食はいたって簡素だった。
彼は何よりも仕事が――国を良い方に変えるという仕事が――好きらしく、家臣より質素な服も気にならないらしい。
それでもこの王宮で最も輝いている人間は、やはりヒョウガではあったが。

シュンは、そして、結局、自らの心の自由を諦めたのである。
王の公認愛妾へのとてつもない報酬を国に返上することで かろうじてプライドを維持し、シュンはその身を国王の前に投げ出した。

他にそれを与えたい人間がいるわけでもない。
国王の同性の愛人ということで貴族たちの好奇の視線にさらされ、また王に取り入るためにシュンに阿諛追従してくる者もいたが、シュンはすべてを無視した。
王の心身を守り安らぐようにすることが この国の発展につながるのならそれでいいではないかと、シュンは無理に自分自身に言い聞かせた。






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