翌日は非常にいい天気だった。
午前7時になると自動的に収納される布製のブラインドの向こうにある窓のガラス越しに、やわらかく平和そのものの光が 氷河と瞬のいる場所に静かに降ってくる。
明け方になってやっと眠りにつくことができた瞬は、その光に瞼を揺り動かされて閉じていた瞼を開けた。

いつからそうしていたのか、氷河が瞬の顔を覗き込むように見詰めていた。
僅かに目を細めて、瞬に朝の挨拶を投げかけてくる。
「おはよう、瞬」
「お……おはよう」
夕べ何事も起こらなかったという事実よりも、朝の光の中で見る氷河の青い瞳に戸惑って、瞬は氷河に同じ言葉を返した。

――夕べは何も起こらなかった。
氷河が熱望しているはずの行為は行われなかった――はずである。
にも関わらず、氷河はひどく上機嫌のていで、そして、彼は明らかに微笑んでいた。
「やはりいいな、こういうのは。もうしばらく、ここにいろ」
「うん……」

こういう・・・・朝。こういう・・・・目覚め。
平和な朝の光の中で、氷河の体温を感じながら彼に肩を抱かれていることは、確かに、氷河が言う通り、非常に“いい”ものだった。
氷河の腕の中にすっかり収まっていることは心地良い。
昨夜、眠りについても緊張感を解くことができない一夜を過ごし、全く心身を休めることができずにいた瞬は、今になって初めて心底からくつろいだ気分になり、氷河の腕と胸の感触を感じながら、もう一度目を閉じた。






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