それから1週間、カロンが城戸邸にやってくることはなかった。
心配が募って待つだけではいられなくなった瞬は、氷河たちには告げずに、カロンが逗留しているという駅前のビジネスホテルを訪ねてみたのである。
そこで、瞬は、カロンが3日前にホテルをチェックアウトしたことを ホテルの従業員に教えられた。
「毎日、小銭で宿泊料金を払ってくださっていたんですけどね、それが尽きたようなことを言ってましたよ」

フロントマンの言葉に不安を覚えて、仲間たちを呼び出し、カロンを捜し始めた瞬は、その数時間後、城戸邸からほど近いところにある公園のベンチにひっくり返っているカロンを発見することになった。
ホテルを出てからずっと、彼はここで寝泊りし、食事も満足にとっていなかったらしい。

「どうして言ってくれなかったんです! 城戸邸にはいくらでも使える部屋があるんだから、そこまで困窮してるって言ってくれれば、すぐに部屋を準備したのに……!」
かつての冥闘士の哀れな姿に 涙ぐみながら、瞬は彼の水臭さを責めたのである。
「そこまで世話になるわけにはいかねぇだろーが! 俺様にだって、元冥闘士としてのプライドってもんがあるんだ!」
必死のカロンの反駁は、だが、極度の空腹のためか、全く迫力に欠けていた。
かてて加えて、瞬の瞳には強力な魔力がある――カロンにとっては。

「でも、こんなところで夜を過ごすなんて無用心です。城戸邸に来てください。お願いですから、これ以上僕を心配させないで」
瞬の瞳にじっと見詰められると――その上、その瞳は涙で潤んでさえいるのだ――カロンには抗する術がなかった。






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