「おまえねー、もう少しあの子に思い遣りのある言葉をかけてやれないわけ?」 セイヤは、この国を手に入れるために他国の王子に“良い顔”をしようなどということを考える人間ではない。 彼がそう言ったのは、だから、シュンに対するヒョウガの態度を、純粋に好ましく思わなかったからなのだろう。 そのセイヤに、シリュウもまた同調して頷く。 「相手は、まだ年若いとはいえ、国のために一命を投げ出す決意をした立派な王子なんだし――まあ、不幸ではあるが」 「赤ん坊の時にはもう神に奉げられることが決められてたてたのなら、童貞だよな、やっぱ。その手の楽しみを何にも知らずに、人の世とおさらばか。オージサマも大変だな」 「どこぞの王子様とは大違いだ」 二人は、他人によって定められた運命に抗することもせず諾々として従おうとしているシュンに憤りを感じておらず、むしろ、その犠牲的精神を称えられるべきことと考えているらしい。 二人に 非難にも似た嫌味を投げつけられながら、ヒョウガは、シュンの従順さに腹を立てている自分の方がおかしいのだろうかと訝ってしまったのである。 |