西暦XXXX年5月某日午後9時59分。 「氷河は !? 自分の部屋 !? 」 ドアに激突する勢いで城戸邸の玄関に飛び込んできた瞬は、ほとんど怒鳴りつけるような声で、たまたま その場に居合わせた星矢と紫龍に尋ねた。 「まだラウンジにいたと思うけど」 瞬の帰宅がこんなぎりぎりの時刻になるのは珍しいと思いながら、星矢が答える。 「ありがと!」 青銅聖闘士たちの私室のある2階に続く階段を半ば以上昇ってしまっていた瞬が、星矢の返答を聞くと、まともに階段の相手をしている暇はないとばかりに、手擦りを乗り越え、エントランスホールに飛び降りる。 そして、そのままラウンジに続く廊下をタッチアンドゴー。 「そんなに急がなくても、俺と紫龍が証人になってやるぜー。おまえは10時にはちゃんとここに帰ってきてたって、氷河に証言してやるよ!」 星矢は、廊下を全力疾走している瞬の背中に向かって大声で叫んだのだが、それに対する瞬からの返事は、仲間の親切な提案が聞こえているのかいないのか、 「10時に氷河の点呼を受ける約束なの!」 という、微妙に意味の噛み合っていないものだった。 「点呼……って、一人しかいないのに」 あっという間にラウンジのドアの向こうに吸い込まれていった瞬の慌てぶりに呆れつつ、星矢はぼそりと呟いたのである。 はたして瞬に――瞬だけに――課せられている『門限10時』という制約は、適切なものなのかどうか――ということを考えながら。 |