ヒョウガが、シュンの様子がおかしいことに気付いたのは、彼を抱いている男の手や唇に触れられるたびに、その接触から身を引こうとするシュンの仕草のせいだった。
シュンには、与えられる愛撫を享受し、そうすることによって我が身に快楽を呼び起こそうとする気配が全く感じられない。
シュンはむしろ、己が身に与えられる刺激を恐れているような素振りだけを示し続けた。

ヒョウガは、それなりにシュンの身体の細さを気遣っているつもりだった。
それほど乱暴な愛撫を加えているつもりもなかったし、自分のそれがへただと言われたこともない。
もっとも、女というものは、それなりに見栄えのする男に抱かれると、それだけで得意になり、また陶然とするものらしく、実際に自分の愛撫が巧みなのかどうかは、ヒョウガ自身も知らなかったのだが。

「や……っ!」
シュンは、とにかく、ヒョウガの愛撫に身を任せようとはしておらず、また酔ってもいなかった。
やがてシュンのその反応が、怯えや不快からくるものではなく、ただの稚拙だと気付いて、ヒョウガはまた驚かされることになったのである。
「シュン、もしかして、おまえ、こういうことは初めてなのか……?」
会ったその日に誘惑してくるのだから、そして、こんなにも簡単に素性の知れない男に身を任せてくるのだから、シュンはこういうことに慣れているのだろうと、ヒョウガは思い込んでいた。
寂しさが、シュンにそういうことをさせるのなら、それも致し方ないことと許す気にもなっていたのだ。

問われたことに、シュンは答えを返してこなかった。
シュンはただ、切なげに眉根を寄せ、固く目を閉じ、唇を噛みしめることだけをした。
どうやら本当に初めてらしい。
いったい この子は何なのだと、ヒョウガは困惑せずにはいられなかったのである。
同時に、軽率なことをしてしまったと後悔もしたのだが、ヒョウガの身体は既に熱い血でたぎっていて、それが途轍もない激しさで体内を駆け巡っていた。
その上、シュンの身体から我が身を引き離そうとしても、シュンがそれを許してくれなかった。
シュンの肌はヒョウガの愛撫から逃げようとしているのに、その細い腕は、ヒョウガを放すまいとして、必死にその背にしがみつき続けていたのだ。

「あ……あ!」
ヒョウガの愛撫に怯えてはいるが、快さを感じていないわけでもないらしく、その唇は甘い吐息と喘ぎを吐き出し続けている。
いったいシュンはどういうつもりで、誰にも触れさせたことのない身体を他人も同然の男の前に投げ出す気になったのか――その疑いが奇妙な緊張と興奮を生み、ヒョウガの身体を更に熱くしていった。
シュンの稚拙のせいで、苛虐に及んでいるように錯覚させられるヒョウガの愛撫は、徐々に深くなっていった。






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