許されないこと――少なくとも、ローマでは常軌を逸していると思われること――をしているのだという気持ちと、これほど自然なことはないと感じる心とを 同時にその体内に抱きながら、むしろその葛藤に衝き動かされて、二人は幾度もその行為を繰り返し、その果てに、シュンは意識を失った。
ヒョウガと身体を交えていた時間が長かったのか、あるいは、意識が現実から遠のいてからの時間が長かったのか、ともかく、シュンが寝台の上で目覚めた時、太陽は既に中天から西に傾き始めていた。
身体のそこここにヒョウガの愛撫の跡と感触が残り、身体の奥では、確かにヒョウガがそこにいた証のような重みが疼いている。

目覚めてなお白日夢の中を漂っているような陶酔に身を任せていたシュンを 正気に戻したのは、気恥ずかしさだった。
隣りにヒョウガがいることに、シュンは気付いたのである。
彼の愛撫の下で、普段の自分なら決してしないことをし、これまでの自分なら決して言わないような言葉を口走っていたような気がする。
そんな自分がヒョウガにどう思われたのか――ということが気になって、シュンは自身の覚醒を彼に知らせることもできなかった。

ヒョウガは目覚めていたらしい――というより、彼は最初から眠っていなかったらしい。
昨夜も一睡もしていなかったはずなのに、彼は、シュンの目覚めを即座に察知し、そして、滑りおりるようにシュンの寝台を出た。
途端にシュンは不安になり、自らも起き上がろうとして、爪先に力を込めた。
が、ヒョウガを受け入れていた場所が鉛のように重く、シュンは自分の足を動かすことさえできなかった。

「あ……あの……ヒョウガ……」
彼のせいで動けないと責めることなど思いもよらず、だが、彼に何を言えばいいのか、どんな顔を見せればいいのかがわからなくて、シュンは救いを求めるようにヒョウガの名を呼んだ。

シュンが身体を起こせない訳を、ヒョウガは理解しているらしい。
そこまで耐えてくれた彼の主人の身体と動かせずにいる脚に、彼はその手で触れ、いたわるように撫であげた。
それから、ヒョウガは、シュンの寝台の上で上体を傾け、
「俺は永遠におまえの奴隷でいる」
と告げて、シュンの爪先に唇を押し当てた。






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