瞬が突然 地味普通至上主義者になったのは、仲間の存在意義を認め、これからも仲間たちと共に在ることを望んだ故のことだった。
その事実を知らされた瞬の仲間たちは、瞬の浅慮を責めるわけにはいかなくなった。

へたに瞬を責めてしまうと、それは瞬の信じているものの価値を貶めることになりかねない。
それは とりもなおさず、瞬を責める者が信じているものの価値をも否定することにもなるのだ。
そしてまた、それ以上に、彼等は、瞬が瞬の仲間たちを大切に思ってくれていることが嬉しかったのである。
瞬を責めるなど、思いもよらないことだった。
氷河の顔が地味になることで迷惑を被る人間など、考えてみれば、この世にはただの1人も存在しないのだから。

しかし――瞬の告白を聞いた星矢の胸中には、何か妙に引っ掛かるものがあったのである。
「なあ、瞬。おまえ、その時、薄緑色のブラウス着てなかったか? 襟元に白いチューリップの小さな刺繍があるやつ」
仲間を信じ大切に思うが故に愚行に走った瞬に、責めるようにではなく、むしろいたわるように星矢が尋ねたのは、相当に長い沈黙の時が過ぎてからだった。

「え?」
ふいに脈絡のないことを尋ねられた瞬が、しばし考え込む素振りを見せ、それから、
「着てたと思うけど」
と、答える。
それで確信を得ることのできた星矢は、やはりそうかと言うように、一度深く頷いた。
その占い師の正体を、星矢は知っていたのだ。






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