「しかし、毎日おまえのあとをついて歩いているだけというのも芸がないな。やはり、自分のメシ代くらいは自分で稼いでくるようにすべきか……」 ヒモで暴君の氷河が突然そんな殊勝なことを言い出したのは、彼が瞬の付き人の仕事を始めて半月ほどが過ぎたある朝のことだった。 瞬のスケジュール管理等、本来付き人がするような仕事をする人間は他にいたし、特にすることもなく瞬の後ろについているだけの仕事は、氷河には退屈だったのかもしれない。 一人言のような彼の呟きを聞いて、瞬は震えあがった。 この暴君は、日々 何らかの目新しい刺激や楽しみを与えてやらないと、退屈して ふらりとどこかに行ってしまうのかもしれない。 瞬は、そんな事態だけは避けたかった。 「じゃ……じゃあ、今日は、僕の代わりに教会に行って、子供たちの様子を見てきてくれる? そして、僕に知らせて。勝手にどこかに行っちゃ嫌だよ。絶対に駄目だよ……!」 だが、瞬が氷河に与えられる目新しい刺激は、せいぜいそんなことくらいしかない。 無慈悲な飼い主にすがる捨てられかけた子猫のような目をする瞬の頭を、からかうように二度三度軽く小突くと、氷河は笑って彼の雇用主に頷いた。 |