「ああ……っ!」
壊れそうなガラス細工か 貴重な宝石を抱くように慎重な愛撫から始めるのが常だった氷河の手が、今夜に限って ひどく荒々しい。
彼の舌は、瞬の肌の上を通り過ぎるたびに その肉をこそげとろうとするかのように獰猛で、彼の爪は、瞬の内臓を引っ張り出そうとするかのように深く、瞬の肉に食い込んできた。
牙のような氷河の歯に噛みつかれ、瞬は全身を戦慄させたのである。

「痛いか」
愛撫の激しさとは対照的に落ち着いた声が、これから彼にすべてを奪われようとしている小動物の耳に忍び入ってくる。
瞬は懸命に首を横に振った。
既に自分の腕がどこにあるのかもわからないありさまになっていたのだが、瞬はそれでも必死に自分の四肢で氷河を絡みとろうとした。

「い……いい。平気……ああっ!」
どんなことをされてもいい。
同情でもいいから、彼の側にいることを許してほしかった。
「氷河、氷河……僕を――」
突き離してしまわないで――と、そんな一言を言う権利もない自分が悲しくてならない。
瞬の喘ぎが嗚咽になりかけた時、泣き声よりも悲鳴を聞きたかったらしい氷河が、力任せに瞬の中に押し入ってきた。






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