シベリアに何か不穏な動きがある――という知らせが 城戸邸の青銅聖闘士たちの許にもたらされたのは、そんな時だった。
住民に具体的な被害が出ていたわけではなかったので、まず斥候を出そうということになり、当然の仕儀として、氷河が仲間たちに先んじてシベリアに向かうことになった。
「瞬はどうするの?」
沙織が尋ねたのは、氷河が相方として指名するか、瞬が自分から申し出るかの別はあっても、こういう時には必ず同行することになっている二人が、この日に限って一向に そのための動きを見せなかったからだったろう。

沙織に問われた瞬が、ちらりと横目に氷河を見てから、
「この時季に、そんな寒いところ、行く気がしません」
と、吐き出すように言う。
「俺一人で十分です。足手まといはいらない」
厚意で水を向けてくれた沙織に、氷河もまた不愉快そうな声で そう言い、彼の言葉を聞いた瞬はますます意地を張ったように、ぷいと横を向いた。






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