2年の時間が経ったことは、疑いようもない事実である。
この2年の間に変わったのは、俺だけではなく、俺の仲間たちも同じだった。
瞬なら成長しているはずなんだ。
俺が変わってしまったように、俺たちが変わってしまったように。 
だから、これは瞬ではない。
どんなに俺の瞬に似ていても、今 俺の隣りに 俺の乱暴な愛撫に耐え抜いた裸体を横たえている健気な人間は、俺の瞬じゃない。

俺は、この、外見だけは俺の瞬そのものであるシュンを、いっそ氷の棺に閉じ込めてしまおうかと、そんなことを考え始めていた。
そうすれば俺は、瞬と同じ姿をした者をいつまでも俺の側に置くことができる。
俺は瞬の亡骸さえ見ることができなかった――。

翌日の朝まで、俺はまんじりともせず、この町での最後の夜を過ごした。
朝の光の中で、俺の瞬そのものの姿をした人間を見詰め、
「これは俺の瞬じゃない……」
俺は、自分に言い聞かせた。

その時、シュンは既に目覚めていたらしい。
そして、俺の呟きを聞いていたらしい。
シュンは俺を見ずに、その瞳から涙をあふれさせ、彼にしては頼りなく かすれた声で、俺に尋ねてきた。
「氷河の好きな人は、僕と同じ名前なの?」

シュンは、自分が俺の瞬に姿が似ているとは考えなかったらしく、俺が彼の名前に惹かれたのだと思ったらしい。
それはそうだろう。
この俺でさえ、シュンに出会うまで、こんな稀有な姿をした人間が 俺の瞬以外にいるなどということは考えたこともなかった。
瞬の兄が語る瞬に似た少女の話を聞いた時も、俺は一輝の目と頭の心配はしたが、彼の言葉は一笑に付した。
いずれにしても――姿のせいであろうと、名前のせいであろうと――俺がシュンを瞬の代わりにしたことには違いがない。

「そうだ」
俺の瞬以外の者に対してなら いくらでも冷酷になれる俺は、それでもシュンのために素っ気なく答え、この町を出るためにシュンから我が身を引き離した。






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