瞬には、レダの気持ちはどうしても完全には理解できなかった。 いずれにしても、レダの行方が知れない今、もはや彼の真実の心を確かめることは不可能である。 ――瞬には、レダの気持ちはわからなかった。 が、自分の気持ちはわかった。 「でも……どんな考え方や思惑があったにしろ、人に『嫌いだ』と言われるのは悲しいし、つらいことだよ。レダにも、氷河にも――氷河は……氷河が僕を嫌ってるなんて思ってなかったから、なおさら」 レダや氷河は、そんなふうに感じる人間の気持ちを察してはくれなかったのだろうか。 だとしたら、人と人が理解し合うことは、尋常でなく難しいことである。 そして、だが、人は、それをしなければ、支え合い助け合って生きていくことはできないのだ。 「むしろ特別に好かれていると思っていたか?」 紫龍の鋭い指摘に、瞬の心臓が一瞬 針を刺されたように痛む。 「うん……」 瞬は正直に、長髪の仲間に頷いた。 だからこそ、氷河の『嫌いだ』という言葉は、瞬に大きな衝撃を与えたのだ。 レダはどうだったのだろう? と、今になって瞬は考えたのである。 瞬はレダに向かって『嫌いだ』という言葉を投げつけたことはなかった。 もしレダが、好意を抱いた相手の仲間の一人でいることより、ただ一人 特別に嫌われている相手であることの方を望む人間だったのであれば、自分が彼を特別に嫌えなかった、そのこと自体が彼を傷付け続けていたのかもしれない――と、瞬は今更ながらに思ったのである。 それがうぬぼれにすぎないことを願いつつ。 「僕、氷河のこと好きだったみたい」 正直な瞬の告白に、紫龍が微笑する。 そして彼は、実に楽しそうに瞬に忠告してきた。 「氷河を嫌ってしまえば、おまえは楽になれるぞ」 「そんなの無理だよ」 「なぜ」 「だって、僕は氷河が好きなんだもの」 「おまえは実に奇特な人間だ」 瞬の師が言っていたという“本当の強さ”を、確かに瞬は その身に備えている。 そんな瞬が自分の仲間だということが紫龍は嬉しく、また誇りに思った。 |