1789年の革命から、1814年のナポレオン没落まで、欧州には大きな嵐が吹き荒れた。 長く続いた王室が新興の力に屈し、あるいは駆逐され、古い価値観が新しい価値観に成り代わられていく様を目の当たりにしたヨーロッパ人たちは、まさしく己が身で世の無常を体験したのである。 もちろん、急激な変化は強い反発を生む。 それは革命の気運や英雄ナポレオンの栄達であっても例外ではなく、社会を変革しようとする それらの力はやがて時代の大きなうねりの中に飲み込まれていった。 1815年のウィーン会議によって、ナポレオン亡きあとの欧州の体制は一応の決着を見た。 ナポレオン登場以前の状態と完全に同じというわけにはいかなかったが、おおよそのところは旧に復する形で。 フランスには、革命前のブルボン王朝が復活した。 が、王政、革命、共和制、総裁制、頭領政府、ナポレオンの台頭・帝政そして没落と、めまぐるしく体制が変わったフランスでは、王政が復活しても――それくらいのことでは――昔が今に戻ることはなかったのである。 フランスの国民は、束の間、新しい世界を垣間見た。 しかし、その世界は幻のように消え失せ、残ったのは呆然とする他に何の術も持たない 虚ろな心のみ。 昨日まで一国に君臨していた王でさえ、一夜にしてその権力を失うのだ。 この世に変わらぬものなど、何ひとつありはしない。 その事実を知った人々の心は、王室が復活しても元には戻らなかった――戻ることはできなかった。 だが、それでも、そんな不確かな世界で人は生きていくしかない――したたかに生きていくしかないのである。 |