瞬が俺の前に現われて消えるまで、正味2時間。
たった2時間だ。
しかも、その内の半分は会話らしい会話もなく、俺たちは剣を交えていた。
なのに、俺はその2時間ですっかり瞬に魅入られてしまった自分を自覚しないわけにはいかなかった。
つまり、俺が恋に落ちた事実を認めないわけにはいかなかった。
でなかったら、たとえ冗談にしても、同性相手に 一晩を共にしたいなんてことを言い出せるはずがない。

俺の真の目的は、勝つことや富を得ることではなく、瞬が心配していた通り、ウルジェイの気楽な次男坊国王に会うことだった。
その望みが叶いさえすれば、他のことはどうでもいい。
しかし、俺は、できることなら勝利者として王の前に立ちたかった。
かなりのブラコンらしい瞬に、兄より俺の方が強いことを証明してやりたい気持ちもある。

だが、瞬の『お願い』をきいてやれば――事実上の敗北を喫すれば――瞬が手に入る。
瞬は、おそらく約束通り 俺に信頼を返してくれるだろう。
俺は正直、自分がどうすべきかを決めかねた。
結論を出せないまま、自分の運命を運命の神に委ねるつもりで――その夜、俺は眠りについた。

御前試合の前夜――。
俺の夢の中に瞬がやってきた。
そして、まるで勝利の前祝いとでもいうかのように、俺に身体を開いてくれた。
俺はベッドの上に飛び起きて、荒ぶる息を静めるために 情けないことをしなければならなくなり――その作業に一段落すると、とても平常心で試合に臨むことはできそうにない自分を認め、深い溜め息をつくことになった。






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