そうして、それから7年の年月を、氷河と瞬は共に過ごしたのである。 出会った頃は 女の子と見紛うほどに可愛らしい子供だった瞬は、時を経るにつれ、花と見紛うほど綺麗な少年になった。 氷河は時折、瞬は本当は女神として生まれるはずだったのに、間違えて聖闘士としての命を得てしまったのではないかと疑うことさえあったのである。 そして、その7年の間、聖域に新たな聖闘士候補が迎えられることはなかった。 「現世に生を受けた聖闘士は我々だけなのかもしれない」 と、あの男は口にするようになっていた。 「アテナの降臨もなく、他の聖闘士も見付からないということは、この先 数十年は大きな戦いの起きる可能性がないということで、この平和な世界を守り、次の世代につなげることが我々の務めだということになる」 「次の世代?」 氷河自身、まだ10代の青年である。 次の世代と言われても、氷河にはピンとこなかった。 だが、 「聖闘士は生命力の使われ方が常人と違うので 総じて短命なんだが、つまり、おまえは瞬と二人で この先何十年も生きていかなければならないということだ」 という彼の言葉は、氷河には素直に受け入れられるものだったのである。 瞬と一緒にいられるというのなら、それも悪くはない。 「大きな戦いのある時代には、何十人もの聖闘士の星を背負った者たちが一斉にこの地上に生を受けるそうなんだが」 「聖闘士に華々しい戦いの場が与えられないことは、空しいことではないのか? 特に、あんたほどに力のある者には」 「なぜだ? 地上の平和と安寧を守るのが、聖闘士の務めだ。それは平時も戦時も変わらない」 「ふん。相変わらず、ご立派なことだ。いつも冷静で取り乱すことがない。そんなふうでないと聖闘士にはなれないというのなら、俺と瞬はおそらく永遠に聖闘士にはなれないな」 嫌味なのか讃辞なのか、それは言っている氷河自身にもわからなかった。 が、それに対する彼の返答が嫌味だということは、氷河にもわかったのである。 「おまえと瞬が小さかった頃には、私も毎日 混乱して あたふたしていたさ。特におまえときたら、生意気で きかん気で、こんなガキの相手をしなければならないというのなら聖闘士なんかやめてやると、幾度思ったかしれない」 「それは初耳だ。その苦難を耐え抜いたことは褒めてやろう」 「この私を褒めてのけるとは、おまえも偉くなったものだ」 嫌味と皮肉を応酬している二人の視線は、今ではほぼ同じ高さにあった。 平和のうちに、この聖域では それだけの時間が流れたのだ。 氷河も瞬も、既に自在に小宇宙を生み、使えるようになっていた。 自分の身体より大きい岩も、今では指一本で打ち砕くことができるようになっている。 おそらく、何かひとつきっかけがあれば、聖域には新たな青銅聖闘士が二人生まれることになるだろう。 そのきっかけが何なのかが、氷河には――瞬にも――わからずにいた。 だが、ここまでくればゴールはすぐ目の前。 氷河はさほどの焦慮も覚えずに、瞬と共にいられる日々を過ごしていたのである。 |