昨日までも、瞬は、表面上はすべての仲間と何のわだかまりもないかのように振舞っていた。
翌日からも、瞬の態度は、表面上は昨日までのそれと何も変わってはいなかった。
だが、星矢たちは、それこそ仲間だからこそ、瞬の変化に気付かないわけにはいかなかったのである。
瞬が、ある特定の仲間にのみ向かう心を隠すために、あえて他のすべての仲間に対して同じ態度で接しようと努めているという事実に。
昨日までは、逃げるように及び腰で氷河に接していた瞬が、ロシアの普通を知らされた翌日から、その視線、その意識、その態度のすべてで氷河を追いかけるようになってしまったのだ。

「たった一日でここまで変わるもんかよ」
呆れた様子でぼやく星矢を、紫龍が苦笑しつつ なだめる。
「まあ、大目に見てやれ。人間というやつは、好きでも何でもない相手に嫌われることだって つらく感じる生き物だ。好きな相手に嫌われていると思うのは、なおさらつらい。それが誤解だとわかったんだから、瞬も嬉しいんだろう」
「そりゃ、その気持ちはわかんないでもないけどさー」

確かに、今日の瞬には、昨日までの瞬の態度ににじんでいた“無理”が感じられない。
昨日まではかなり無理をして氷河との間に何の問題もない振りを演じていた瞬は、今日はごく自然に、その視線とその意識で氷河を追いかけている。
その変化は、おそらく良い方向への変化であって、矯正しなければならないようなことではない。
だから、星矢は、瞬の変化を指摘することも からかうこともしないでいてやることにしたのである。
氷河と良好な関係を保っている振りをするために無理をしていた昨日までの瞬よりも、今日の瞬は楽しそうで幸せそうで、そして、どういうわけかひどく可愛らしく見えたから。






【next】