その日から、マイヤに接する際の瞬の態度は微妙な変化を見せ始めた。
これまでは、沙織に客人の世話を頼まれたから、多忙な沙織に代わって 沙織の友人を歓待していた瞬が、氷河のために それをするようになってしまったのである。
つまり、マイヤにとって氷河が いかに魅力的な恋人であるのかを訴えるために。

「俺、氷河は瞬が好きなんだと思ってたんだけど」
「俺もだ」
「そんで、瞬も、氷河に好かれて悪い気はしてないってないっていうか、何ていうか」
「同意見だ」
「だよなー……」
そう・・なのだと思っていただけに、星矢には、必死になってマイヤに氷河を売り込もうとする瞬の気持ちが 解せなかったのである。
そして、氷河が マイヤの存在を意識しすぎるほど意識し、過剰反応を示す訳も。
氷河は瞬を好きなのだと、紫龍も思っていたというのなら、それは ただの勘違いや独りよがりな思い込みではなかったのだろう。
マイヤの登場で、氷河は豹変してしまったのだ。

「いいなーって思ってる相手がいても、理想通りの女が現われると、やっぱ、男は そっちの方に目移りしちまうもんなのかなー」
マイヤを好ましくないと思うわけでも、彼女と氷河は似合わないと思うわけでもない。
星矢は ただ、今の氷河を氷河らしくないと思うだけだった。
つまり、一つの目標、一つの目的を定めたら、脇目もふらずに一直線に その目標や目的物に向かって行く いつもの氷河らしくない――と。
同時に、星矢は、自分の心を殺して 氷河の恋の成就のために努める瞬が あまりに瞬らしいことに、尋常でない腹立ちを覚えていた。






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