pure portraits






その双子の男たちが城戸邸にやってきたのは、海底神殿での戦いが終わり、アテナの聖闘士たちが平和の時を――それが束の間のものだとは知らずに――享受していた時。
彼等は、その姿からして人間離れしており、その身にまとう空気もまた異様だった。
一人は 金色の髪の持ち主で 瞳までが金、もう一人は銀色の髪の持ち主で 瞳までが銀。
到底 人間のものとは思えない姿に、ごく普通の上下を――とはいえ、それは、これから夜の女王主催の宮中晩餐会に赴く人間のように漆黒だけでできていたが――まとっているせいで、その姿の尋常ならざる色彩が際立つ。
人間の世界で浮かない・・・・ために、わざわざ現代の人間が身に着ける衣服を身に着けてきたのだろうが、彼等が発する小宇宙の異様さが――それを“強大な”小宇宙と言っていいものだろうか――何より如実に、彼等が人間でないことを明示していた。

彼等の異様な小宇宙を感じ取ってエントランスホールに駆けつけたアテナの聖闘士たちは、その場に立つ二人の姿を一目見た時から、彼等がアテナとアテナの聖闘士たちの敵であることを感じ取っていた。
決して攻撃的ではないが傲慢さを感じる小宇宙。
彼等が何に対して傲慢なのかといえば、それは人間というものに対して――としか言いようがない。
実際 彼等は、アテナの聖闘士たちに少々遅れて女神アテナこと城戸沙織が その場にやってくるまで、『こんにちは』も『お邪魔します』も言わず――人間である聖闘士たちの姿など、そもそも視界に入っていないと言いたげな態度を堅持していた。

「あなた方は――」
二人の異様な雰囲気の男たちの姿を認め、アテナが微かに眉をひそめる。
神に対してなら尽くす礼を知っているというかのように慇懃に、二人の男はアテナの前で軽く腰を折った。
「アテナが聖域にご光臨、ポセイドン配下の海将軍たちを退けたと伺い、お祝いを申し上げにまいりました」
「おまえら、何者だっ」
星矢の誰何すいかを、彼等は無視した。
人間ごときに名乗る名はないということらしい。
その声自体が聞こえていない様子を見せられて、星矢が むっとした顔になる。
名を名乗ることもしない無礼で不気味な客に食ってかかろうとした星矢を、沙織は その視線で制した。

「客間へどうぞ。お茶は飲めるのかしら」
「実体です」
「では、こちらへ」
アテナが自ら 彼等の案内に立ったのは、彼等の力が強大なものだったからというのではなく、星矢に そこで暴れられては困るという切実な問題を回避するためだったかもしれない。
アテナの聖闘士たちは 当然のごとく、三者の会談に同席しようとしたのだが、沙織は、
「大丈夫よ」
と言って、彼女の聖闘士たちが客間に入ることを許さなかった。






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