宇宙人だと信じていたのに 宇宙人じゃないと言われて――納得できる説明をされてしまい――だが、俺はなぜか落胆失望はしなかった。
城戸邸を出て、駅前の駐車場に置いておいたヴィッツに戻った時、俺はなぜか 自分の心が高揚していることに気付いたんだ。
本のネタが消え、12年間信じてきたものが 幻にすぎなかったとわかったっていうのに。
車のシートに座り、目を閉じて、瞬さんの面影を脳裏に思い描いた時、俺にはやっと すべてがわかった。

12年前――あの時、俺は瞬さんに恋をしたんだ。
だから、忘れられなかった。
瞬さんを宇宙人だと信じたからじゃなく、瞬さんが綺麗で温かくて優しかったから、俺は あの綺麗な瞳に恋をした。
瞬さんは、俺の初恋の人。
忘れられるわけがない。
そういうこと――わかってみれば何ということもない、ありふれた、だが、何よりも重要なこと。
地球人でも宇宙人でも――地球人だとわかっても、俺に瞬さんを忘れることなどできるわけがなかった。






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