瞬は、一般的に、控えめな人間ということになっている。
その評価は、だが、彼の側に星矢という仲間がいるという事実にるところが大きいだろう。
瞬が何らかの行動を起こそうとしても、その時には既に 星矢が走り出している。
瞬は 自然に星矢のフォローにまわることが多くなり、そのせいで、余人に“控えめ”“慎重”“行動力に乏しい”等の印象を与えることになるのだ。
もともと 争いを好まない性格、人に先んじたいという欲も皆無。
平生は、“控えめ”と人に思われることは もちろん、実際に“控えめ”でいることも、そつなく(?)こなす。
が、自分以外の人間の命や心がかかった事態となれば、話は別である。
行動派に見えない人間が、思索派、理論派であるとは限らない。
動機が “人のため”“仲間のため”であれば、瞬は星矢より行動派だった。

ゆえに、その夜、瞬が氷河の部屋を訪ねたことは、瞬にしてみれば 至極当然、極めて自然、むしろ必然と言っていいことだったのである。
考えられることは考え尽くし、仲間たちにも相談した。
それで解決に至らない問題は、当人に当たって解決を図るしかない。

二人共に 幼い頃に両親を亡くし、二人共に 頼る大人のない境遇に投げ出され、二人共に 聖闘士になるための修行に耐え、二人共に 命をかけた戦いを戦ってきた仲間。
その仲間が 孤独の中で傷付き 苦しんでいる事態を、瞬は看過することができなかったのである。






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