「氷河はやっぱり、僕を仲間じゃないって思うくらい、孤独に苛まれていたんだよ。でも、もう わかってくれた。もう寂しくないって、氷河は僕に言ってくれたよ」
瞳を明るく輝かせ、嬉しそうな笑顔で報告してくる瞬の前で、星矢は、目も眉も鼻も唇も頬も――顔のすべての部品を引きつらせていた。
脳の血管が、かなりの痛みを伴って、血流の激烈振りを星矢の神経と意識に伝えてくる。
声と言葉を発するために、星矢は、神に戦いを挑む時と大差ない体力と気力を奮い起こさなければならなかった。

「だ……だから――おまえを仲間じゃないと思うくらいの孤独に苛まれていた氷河を 孤独でなくするために、氷河と裸で抱き合って寝たって?」
瞬の報告内容を 自分の声で繰り返すと、星矢の頭痛は 一層ひどくなった。
「うん」
瞬の返事が、星矢の脳の血管を寸断しそうになる。
「『うん』って……『うん』って……。た……ただ寝るだけで済んだのかよ」
「え?」
瞬は、星矢の質問の意味が わからなかったらしい。
少し首をかしげ、かしげたまま、仲間に 更に詳細な報告をしてくる。

「本当に心から信じている相手には 無防備な姿を見せられるはずだって、氷河が言うから、そうしたんだ。ちょっと痛いことされたし、少し疲れたけど、氷河が僕を信じてくれて、僕も もちろん氷河を信じてて、それが確かめられて、すごく嬉しかった。氷河は もう寂しくないんだよ。ほんとに よかった!」
『ちっともよくない!』と、氷河の孤独を癒すことができたと信じ 喜んでいる瞬を怒鳴りつけるわけにはいかない。
「あんの野郎ーっ!」
当然のことながら、星矢の怒りは 氷河ただ一人に向けられることになった。






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