翌日は日曜だった。
一輝の惰弱発言に 瞬が落ち込む事態が頻発するので、星矢は以前から、そのうち瞬の家に行って 一輝に天誅を食らわせてやらなければならないと考えていた。
“そのうち”などと悠長なことを言わず、いっそ今日、瞬の家に押しかけてやろうかと考え始めていた星矢の許に、当の一輝から電話が入ったのは、朝の7時。
電話の主は、星矢が名を名乗るのも待たずに、受話器の向こうから、
「瞬が家出したっ!」
という、咆哮じみた声を星矢に叩きつけてきた。
『瞬が家出?』と星矢が問い返すのも待たずに、
「おまえのところに行ってないかっ」
と、怒号のような声で畳みかけてくる。

一輝が あまりに慌てふためいているので、星矢は逆に冷静になってしまったのである。
本当に 瞬が家出をしたというのなら、それは もちろん慌てなければならない事態だが、あの瞬が そんなことをするわけがないという考えも、星矢の中にはあったのだ。
「ちょっと落ち着けよ。日曜の朝7時に 人んちに押しかけてくるなんて、んなこと、瞬がするわけないだろ。瞬は俺にとこにはいねーよ。家出して、俺を頼るにしても、瞬が俺んちに来るのは、どんなに早くても9時過ぎ。もちろん、事前に、来ていいか確認してから。紫龍んちに行くにしても、氷河んとこに行くにしても、おんなじ。瞬は おまえと違って、礼儀ってもんを知ってんの」
「やかましい! 瞬が行ってないなら、それだけ言えばいいんだっ」
瞬と違って礼儀を知らない瞬の兄が、捨てゼリフのように 不満と不快の念だけを怒声で表し――謝罪も入れず――唐突に電話を切る。
一輝同様 礼儀を知らない星矢は、すぐさま 紫龍と氷河に連絡を入れ、一輝に許可を求めず、勝手に一輝の家に集まる算段をした。






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