私は最初、それを 雷が落ちた音だと思った。
窓の向こうに広がってる空は青く晴れて、雨なんか一粒も降っていなかったのに。
次に聞こえてきたのは、
「友野さんを守って!」
っていう、城戸さんの声。
「瞬! 彼女を!」
氷河さんが 瞬さんに短く言って、紫龍さん、星矢くんたちと一緒に、壊れたドアから庭に飛び出ていく。

私には、何が起こったのか、全然 わからなかった。
それどころじゃなかったのよ。
瞬さんが――私より華奢に見える白百合の君が、私を お姫様抱っこして、氷河さんたちが出ていったのとは逆の方に、私の身体を運ぶ。
わー。
近くで見ると、瞬さんの顔は 一段と綺麗で、凛々しくて。
平生の私なら 思う存分うっとりするところなんだけど、残念ながら その時は“平生”じゃなかった。

轟音と、交差する おびただしい閃光。
そして、もしかしたら断末魔の悲鳴が幾つか。
騒ぎは、5分 経たずに終わった。
雷でも地震でも火事でもない騒ぎ。
「大丈夫です。氷河たちを信じて」
瞬さんが そう言ってくれるから、恐くはなかったんだけど――。

5分後、蓼科高原の別荘地に静けさが戻ってきた時、城戸さんの別荘は半壊していた。






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