『おはぎパーティをするから、全員集合』 その号令が 瞬の仲間たちに下されることになった そもそものきっかけは、一本の電話だったらしい。 いつも どこを ふらついているのか わからない瞬の兄が、瞬の部屋の固定電話に電話を入れてきた。 スマートフォンではなく固定電話の番号をコールしたということは、何としても瞬を掴まえて必ず伝えなければならない急用があったわけではなく、おそらくは ちょっとした気まぐれだったのだろう。 実際、一輝は、名も名乗らず、 「皆、息災か」 と 瞬に尋ね、瞬が、 「はい」 と 答えると、それきり電話を切ろうとしたらしい。 だが、どうしても兄に会いたかった瞬は、滅多にない その機会を逃すまいと考えた。 そして、咄嗟に、『今年の新米で おはぎを作ってパーティをするから、絶対に食べにきて』と、兄に せがんだのだ。 なぜ おはぎだったのかは わからない。 もしかすると、瞬自身も わかっていないのかもしれない。 日持ちのしない食品は宅配便等の手段を用いて送り届けることができないので、一輝が直接 やってくるしかないと、それを期待してのことだったのかもしれない。 物が日持ちのする食品や食品以外の何かだと、一輝は とんでもない場所の郵便局や宅配便の営業所に、局留め もしくは営業所預かりで送るように指示してくるのだ。 北海道の宗谷岬郵便局、沖縄の波照間島、小笠原諸島の父島、その他諸々、『なぜ そんなところに?』と、疑いたくなるような場所に。 国内ならまだましで、国外のホテルに送り届けるように言われたこともあるらしい。 泣き落としに及んだのか、ナターシャをだしに使ったのか、仲間たちを引き合いに出したのか。 ともあれ、瞬は、兄に来訪の約束を取り付けることに成功した。 約束さえさせてしまえば、一輝は その約束を必ず守る。 一輝は、そういうことでは筋を通す男。 かくして、めでたく 今年の新米で作る おはぎパーティの開催が決まり、瞬の『全員集合』の大号令が発布され、11月の ある日、元青銅聖闘士たちは 氷河のマンションに集結することになったのである。 |