「ナターシャちゃん、どうしたの? 恐い夢を見たの?」
「マーマ……」
ナターシャが目を覚ました時、そこにいたのはマーマだった。
ナターシャのマーマ。
いつものマーマ。

「俺と瞬がついている。もう恐くないぞ」
「パパ……」
お寝坊のパパまでいる。
もしかしたら、夕べは お店のお客さんが いつまでも帰ってくれなくて、パパはアサガエリなのカナ?
ナターシャが目を開けて、パパの方に手をのばすと、パパはナターシャの手を握りしめてくれた。
ナターシャの何倍も大きな手。
パパの手。
パパの手ダヨ。

パパの手はおっきくて、力も強いケド、とっても綺麗ナノ。
ドーシテ? って、ナターシャが訊くと、パパは、ナターシャとマーマをイイコイイコするためだって言う。
だから ナターシャは、いい子でいなきゃならないんダヨ。
だって、そのために、パパの手は綺麗なんだカラ。

マーマの綺麗な目が ナターシャを見てる。
マーマの目が綺麗なのは、いつもパパとナターシャを見てるからなんダヨ。
マーマが そう言ってタ。
だから、いつもパパとマーマを見てるナターシャの目も綺麗なはず。

パパとマーマは、ナターシャを見て、嬉しそうに笑った。
マーマは泣きそうな目。
でも、笑ってル。
よかった。
パパとマーマが、ナターシャのパパとマーマに戻ってる。

マーマの目には涙の膜ができてて、ナターシャ、ドーシタノって訊いたんダヨ。
悲しいことがあったの? って。
マーマは、人は 嬉しい時にも泣くんだよって、ナターシャに教えてくれた。






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