それが自分を“かわいそうなパパ”でなくすための氷河の策略だったということは、瞬には もうわかっていた。 ナターシャを蘇生させるために、ナターシャを動けなくしている力を消し去ろうとして、その力が デスマスクと氷河によって作られたものであることに、瞬は気付いたのである。 顔の無い者の一味にしては、手強かったのも道理。 そもそも、襲撃のタイミングが 絶妙にすぎた。 公園から 最も人が少なくなる時刻、ナターシャのパパの仕事前、ナターシャのマーマは仕事を終えた直後。 襲撃する家庭の都合を考慮して、襲撃してきてくれたような敵。 そんな気遣いを示してくれる敵が、普通の敵であるはずがない。 だが、それが なぜナターシャのパパを“かわいそうなパパ”でなくすための方策になり得るのかが、瞬には わからなかったのである。 実際に、その日以降、ナターシャは 氷河を“かわいそうなパパ”だと思わなくなったようだったので、なおさら。 氷河に事情を訊いても、彼は、 「ピンチの時に おまえに助けに来てもらって、満足したんだろう」 と言って、楽しそうに笑うだけだった。 |