世界は どんな世界でも、いつかは終わり、消えてしまうものだろう。 では、時間はどうだろう。 時間は永遠なのか。 時間ですら、いつか その存在が消えてしまうのか。 小さな光を目指して歩くナターシャの旅は、長い長い時間を費やして、やっと終わった。 「ナターシャちゃん! ナターシャちゃん、大丈夫? どうしたの。また 恐い夢を見たの?」 ナターシャが目を開けると、そこには 生きているマーマがいた。 少し心配そうな目をして、だが ナターシャが見知っている通りの優しい笑顔。 白く優しい手が 温めるようにナターシャの頬を包み、その眼差しには無限の力が宿っている。 「恐い夢など、見る必要はないぞ。ナターシャを傷付ける者は、どんな化け物でも 俺と瞬が退治してやるから」 マーマの後ろには、パパがいた。 力強い声で、ナターシャを励ますパパ。 だが、その青い瞳は、マーマのそれより深い心配の色。 笑顔でも心配顔でも――二人がどんな様子でいても、パパとマーマのいるところが、ナターシャにとっては光のある場所だった。 ナターシャは、“マーマ”が言っていた場所に辿り着けたのだ。 恐くて孤独な旅が終わったことよりも、“マーマ”に『そうしなさい』と言われたことを成し遂げられた自分が嬉しくて、 「パパ! マーマ!」 ナターシャは、ナターシャの顔を覗き込んでくるマーマに飛びついていった。 その首に両腕を絡ませ、しがみついていく。 そんなナターシャを抱きかかえるように身体の位置を変えて、マーマは ナターシャのベッドの縁に腰を下ろした。 生きているマーマは温かい。 「ナターシャ。そんなに怖い夢だったのか?」 そう言って、マーマの腕の中にいるナターシャの髪を撫でるパパの手も温かかった。 そして、 大きく力強い。 ナターシャは、その温かさが涙が出そうになるほど 嬉しかった。 “マーマ”が言っていた、光のあるところ。 ここがそうなのだ。 自分は、“マーマ”の言いつけを守って、“マーマ”が行くように言った場所に辿り着いた。 “マーマ”が望むことを成し遂げたナターシャは、とても いい子なのだ。 “マーマ”も褒めてくれるに違いない。 「ナターシャ、恐くないヨ。恐いのは、もう終わったヨ!」 それでも、生きていて温かいマーマから離れる気になれず、マーマにしがみついたまま、ナターシャは答えた。 ここは温かい。 そして、明るい。光に満ちている。 恐いことなどない。 生きていて温かいパパとマーマのいる この場所は、『恐いことは終わった』と思える場所だった。 |