十二宮は、アテナの聖闘士である僕たちの正念場。
十二宮での戦いは、僕たちにとっても、アテナにとっても、最も重要な戦いだったと思う。
でも、僕は、十二宮では ナターシャちゃんに会うことはなかった。
天秤宮や双魚宮で、ナターシャちゃんの姿が ちらりと見えたような気はしたんだけど、それは すぐに消えてしまった。
あれは、十二宮での戦いでは 僕を励ます必要がないと、ナターシャちゃんが思ったからだったのかな。

黄金聖闘士たちの力は強大で、僕たちが十二宮を突破できたのは ほぼ奇跡といっていいことだったと思う。
でも、僕は、十二宮での戦いでは、どんな迷いも抱くことはなかった。
どんな迷いにも 囚われることはなかった。
僕には、何があっても信じていられる仲間がいたから。
だから、ナターシャちゃんは、自分が僕を力づけなくても大丈夫だと思って、僕の前に姿を現わすことをしなかったのかもしれない。
ナターシャに そう思ってもらえたのなら、僕はとっても嬉しい。

あ、でも、僕は、ナターシャちゃんには また会いたい――ううん、何度でも会いたいよ。
できれば、僕が元気な時に ナターシャちゃんに会って、僕が彼女を励ましてあげたり、彼女の悩みを聞いてあげられるようになれたらいいと思う。
僕の方が、ナターシャちゃんより大人なんだから。
でも、彼女には世界一のパパとマーマがいるから、僕の励ましなんか必要ないのかな。

ナターシャちゃんは、僕が強くならないと困るって言ってたけど、あれはどういう意味だったんだろう?
ナターシャちゃんは、どうして僕のところに来てくれるんだろう?

十二宮戦、アスガルドでの戦い、海皇ポセイドンとの戦い。
僕が ナターシャちゃんに会うことはなかった。






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