どこをどう歩いたんだか、俺はいつのまにか俺と瞬が通った小学校の門前に来ていた。堅く閉じられた門に身体をもたせかけ、そのままずるずるとその場にへたりこむ。 お袋が『土の校庭のある小学校に通わせたい』と言って、俺のために選んでくれた学校。 ここで、俺は瞬に会った。 この校庭を瞬と走りまわっていた頃は、こんな日がくるなんてことも考えず、ただただ瞬と一緒にいるのが楽しかった。 泣き虫で寂しがりやで引っ込み思案で綺麗な瞬。俺は、瞬のいちばんの友達でいることが得意で仕方がなかった。瞬がいてくれれば、お袋がいないことも、親父が俺を構ってくれないことも平気だった。 瞬はずっと俺の側にいるんだと、瞬のいちばん側にいるのはこの俺なんだと、疑いもなく信じていられたあの頃――。 いや、つい昨日まで、俺はそう信じていたんだ。 誰よりも俺が瞬を知っていて、俺の知らない瞬を知っている奴なんか、この世にはいないんだ、と。 そう思えるから我慢もできてたんじゃないか。瞬を好きだという気持ちも、瞬を抱きたいという気持ちも。俺が毎晩おまえを思い描いて何をしていたか、知ってるのか!? 俺が自己嫌悪に陥りながら、それでもおまえの前で平静を装っていたのは、こんなことのためじゃない! 絶対に、こんなことのためじゃないんだ! 「瞬…」 声に出して、俺は瞬の名を呼んだ。 けど、答えてくれたのは、夜の小学校の校庭を吹き抜ける、春の匂いを含み始めた静かな微風だけだった。 |